こんにちは! ユメメです^^
今回は『ヒルガードの心理学』の第3編です。
どのような教育で子育てをしたら良いのだろう🧐
人の能力はどのようにして獲得されるのだろう??
この記事では以下の5点について解説していきます。
- 生まれと育ち
- 新生児の能力
- 児童期の認知発達
- 人格と社会性の発達
- 青年期の発達
この記事を読むことで人の発達過程を理解して子育てに活かすことや自己分析に役立てることができるでしょう。
それでは、始めましょう!
目次
チャート1 生まれと育ち
「生まれ」と「育ち」のどちらが人間の発達の流れを決定づけるのか?
この問題は何世紀にもわたって議論されてきた話題です。
1-1 人の能力は生まれつきのものか?
成績優秀なクラスメイト。プロ野球選手。
人の能力は生まれつき備わっているもので成長には限界があるでしょうか?
心理学者は生まれ(生物学的要因)と育ち(環境的要因)それぞれの立場を示しています。
- ジョンロックは「赤ちゃんは小さな大人であり、十分な能力と知識を持ってこの世に生まれた」とした上で「それらの能力は成長と共に表面に現れた」ものとしています。
- チャールズ・ダーウィンは「進化論」によって「自然選択(自然淘汰)」によって環境条件に適応する生体が生き残り、生き残りに必要な特定の能力が引き継がれるとしています。
一方、20世紀になると行動主義の台頭により「育ち」派の意見が強調されました。
B.F.スキナーとジョン.B.ワトソンは「人は環境に適応できる能力を備えており、環境に適応する過程で能力を獲得している」とした考えを主張しています。
特に、ジョン.B.ワトソン氏はこのようにも述べています。
私に、心身ともに健康な12人の赤ん坊と彼らを育てるために私自身が詳細を決める世界を与えてくれたなら、そのうちの任意の1人を選び、その子の才能、嗜好、性向、能力、素質、血統に関わりなく、私が選んだどんな専門家、すなわち、医者、弁護士、芸術家、会社の社長、それに乞食や泥棒にさえもなれるようにその子を訓練してみせよう。 第3章 心理発達 より
例えば、子供が初めて言葉を発する場合それぞれの立場からどのように説明できるでしょうか?
「生まれ」派(生物学的要因)は「生得的な能力がその能力にとって適齢期となったタイミングで表に現れた」
「育ち」派(環境的要因)は「両親の言葉を聞いて学習した結果、言葉を発した」
と説明します。
それぞれの立場で主張は異なりますが、ここで、共通しているのは、特定の発達段階よって発達の連続を説明しているということです。
人の能力は「生まれつき」だとしても「育ち」だとしても私たちは日々変化を繰り返しています。
1-2 発達段階
心理学者は生涯にわたる発達を、幼児期期、児童期、青年期、成人期の段階に区別して考えます。
そして、
ある発達段階の行動は、1つの顕著な行為あるいは統括的な特徴によって体制化されています。
例えば、乳児の発達を考えてみましょう。
「つかまり立ち」する前には「おすわり」を、その前には「ハイハイ」があります。
決して「おすわり」のステップを省略して「ハイハイ」から「つかまり立ち」をするわけではありません。
ある段階で見られる行動は、それ以前の段階、あるいはそれ以降の段階で現れる行動とは異なっているということです。
そして、発達心理学者は「臨界期」と「敏感期」が発達の段階に大きく寄与すると主張しています。
臨界期とは、人間の一生には決定的な時期があるとした主張です。
特定の期間にある経験や事象・出来事が起こらないとその後の成長に著しい問題が発生するとう発達段階のことです。
敏感期とは、ある特定の種類の発達にとって最適な時期があるとした主張です。
例えば、6〜7歳以前に十分な言語的刺激がないとその後の言語習得に失敗するという考えがあります。
私たちは意識していないだけで、もしかすると、
今日という1日の中にもひとつの臨界期があったのかもしれません
そのように考えると、今この瞬間を大切にしようと思えるのではないでしょうか^^
チャート2 新生児の能力
チャート2では新生児の能力について、心理学者によるさまざまなアプローチを紹介します。
19世紀末、心理学者のウィリアム・ジャームズは新生児が知覚する世界について次のように述べました。
新生児はガヤガヤ、無秩序、混乱した状態として世界を体験している。
認知、表現力が備っていない新生児は何を感じているのか?何を考えているのか?新生児はこれらを私達に語ってはくれません。
そこで、心理学者は新生児の活動や能力の程度を観察するために、さまざまな手法を考えなくてはなりませんでした。
2-1 視覚
新生児の視覚の分析には新生児に光を当ててみて、顔を逸らしたり、心拍数をモニタリングするといった手法が用いられます。
そのような実験の結果、新生児の視覚は生後7ヶ月から8ヶ月までには大人と同じくらいの視力まで成長することが知られています。
そして、新生児の視覚的な好みはいくつかの研究によって示されています。
例えば、平坦な模様よりも複雑な模様、直線的な模様よりも曲線的な模様を好む傾向があります。
さらには、顔への好みについては怒った顔よりも普通の顔を見ることを好む傾向、のっぺらぼうよりも普通の顔を好む傾向も確認されています。
このような顔に関する学習は、生後数日から数ヶ月にかけて行われることが実験により示されています。
新生児の能力獲得には、初期の発達段階で適切な学習の機会があることが重要です。
2-2 学習と記憶
あなたは生後1年間に経験したことを記憶しているでしょうか?
多くの人は何も覚えいないため、
かつて、乳児は学習することも、記憶することも不可能と考えられていました。
しかし、いくつかの研究により乳児には学習、記憶する能力があることが示されています。
生後数時間の乳児を対象として、
甘い液を飲むために純音がなった時は右へ、ブザーがなった時は左を向かなくてはならない状況を設定した実験が行われました。
数回の試行ののち、この乳児は間違いなくこの課題をこなしました。
純音では右、ブザーでは左を向いたのです。(Siqueland &Lipsitt,1966)
この実験により乳児は生後数時間であっても「学習する能力」が備わっているということが示されました。
2-3 新生児は生まれる前から記憶する
生後数時間の新生児に学習や記憶の能力があることが示されました。
しかし、さらに驚くことに、新生児が生まれる前の子宮内にいた時からすでに何らかのことを記憶しているということが実験により明らかとなったのです。
妊娠している女性が、出産前の6週間にわたって児童向けの物語「Cat In The Hat」の初めの28文節を音読したという実験です。(De Casper & Spence 1986)
出産後、新生児に対して吸引回数を観測できるおしゃぶりが渡されました。
そこで得られた結果は、
- 見知らぬ女性が物語を読み聞かせるのに対して、母親が物語を読み聞かせると吸引回数が増した。
- 別の物語を読み聞かせるよりも「Cat In The Hat」を読み聞かせた方が吸引回数が増した。
という結果です。
つまり、私たちには「生まれる前」から学習し、記憶する能力が備わっているということが示されたのです。
意識的ではなくても人には常に記憶し、学びます。
チャート3 児童期の認知発達
このチャートでは児童期の発達段階の分析のため、「ピアジェの発達段階理論」を紹介します。
児童期の発達にはさまざまな段階があります。
例えば、言葉を発して意思を伝える。パズルを解く。
このような作業は2歳から7歳の段階で可能になります。
このように、年齢の階層によって認知発達の段階分けをしたのがスイスの心理学者ジャン・ピアジェです。
3-1 ピアジェの発達段階理論
ピアジェは子供の持つ自然に成熟する能力と、周囲の環境との相互関係に注目し、自分の子供を観察したさまざまな実験によって子供はスキーマを構築すると提唱しました。
スキーマとは、物理的世界や社会的世界はどのように作用しているのかに関する理論です。
例えば子供にとっては「病院で白衣を着た男性」は医者である。という事実がスキーマということです。
そして、ピアジェは子供の発達には「新しい経験が既存のスキーマに合わない場合、子供は調節する」と考えました。
調節とは、既存のスキーマに合わない状況対しては、既存のスキーマを修正することです。
例えば、
「病院で白衣を着た男性」は医者である。というスキーマをもった子供は
「病院で白衣を着た女性」を見たとき、初め「医者」だとは思いません。
しかし、白衣を着ているのは女性であっても「医者」であるという事実を見せられた場合、子供のスキーマは「病院で白衣を着ていれば医者である」というように更新されます。
スキーマの更新によって子供は世界に対する自分の認知を広げていき、この積み重ねによって発達を遂げていくのです。
3-2 4段階の認知発達
ピアジェは子供の認知発達は次の4段階に分けて記述できるとしています。
- 感覚運動(誕生〜2歳)
- 前操作(2歳から7歳)
- 具体的操作(7歳から11歳)
- 形成的操作(11歳以上)
感覚運動ではは自己と物を区別します。
自己を活動を起こす主体として認識し、知的に活動し始める時期です。
例えば、
物をつかむにはどのくらい手を伸ばさなくてはならないか?物を動かすにはどのくらいの力が必要かを学習します。
前操作では言葉を使ってイメージや単語によって表現します。
また、思考は自分が中心的で、他者の立場で理解することが困難です。対象を一つの特徴によって分類することができる時期です。
例えば、車輪がついたおもちゃは車のように扱うといった事が可能になります。
具体的操作では対象や出来事を論理的に思考することが可能になります。
数の保存(6歳)、量の保存(7歳)、重さの保存(9歳)の概念を理解することができる時期です。
例えば、量の保存とは、同じ量の水を大きさの違うグラスに移し替えても、水の量が変わっていないことを理解できるということです。
形成的操作とは、抽象的な命題を論理的に思考し、仮説を立てて検証できるようになります。
将来の問題や観念的な問題にも対処できるようになる時期です。
子供の認知発達を進めようと思った場合、ピアジェの発達段階理論を踏まえて方法を考えてみると良いでしょう!
チャート4 人格と社会性の発達
子供が夜泣きしたり、反抗したり、扱いに困ってしまう子供。
気難しい人や扱いやすい人。
人にはさまざまな気質が備わっています。
気質は生得的なものなのか?あるいは学習によって身につくものなのでしょうか?
4-1 気質
反抗したり、扱いに困ってしまう子供を持つ親は、往々にして子供が持つ問題を親自身の責任であると考えてしまいがちです。
しかし、気質に関する研究(Chess&Thomas,1984;Thomas&Chess1986,1977)によって多くの気質は先天的なもので、親と乳児の関係は相補的なものであるという見解が確立されています。
アメリカの140人の乳児を対象とした研究が行われました。
乳児たちは9つの特性に基づいて得点化され、3つの気質に分類されました。
- 扱いやすい気質:よく遊び睡眠や食習慣が規則的な乳児(約40%)
- 気難しい気質:新しい状況に否定的な反応を示す乳児(約10%)
- ゆっくりと適応する気質:新しい状況に徐々に適応する乳児(約15%)
その他の35%の乳児は各分類に対して、その水準の高低を優位に評価できない乳児でした。
この研究はその後133人が成人になるまで追跡調査されました。
その結果、生後5年間の気質の得点は将来にわたって優位な相関を示しました。
つまり、「気難しい乳児は後々小学校で多くの問題を起こす」傾向があったのです。
今の自分を形成している気質は、生得的な要素が支配的であること。
つまり、相手や自分の気質を変えるのは難しいことがわかります。
気質を変えようと思うのではなく、他の変えられるものからアプローチする必要があるということです。
4-2 愛着
乳児が特定の人とのつながりや、その人がいることで安心感を感じることを愛着といいます。
初期の心理学者は、乳児が母親に愛着を示すのは、単に母親が食べ物を提供してくれるからと考えました。
愛着は食料の提供の有無によって左右されるのか?これを確認するため、サルの人口母への反応の実験があります。(Harlow&Harlow,1969)
新生児の猿サルが、頭部が木でできた2つの人口的な「母親」と一緒に置かれました。
一方の母親は剥き出しのワイヤーで、もう一方は厚手の布で覆われており抱きつきやすいように作られていました。
それぞれの母親の胸部には哺乳瓶が取り付けられており、そこからミルクが供給されるようになっています。
実験は、どちらの「母親」も食料を供給してくれる状況で、どちらの「母親」と一緒にいることを望むかを明らかにする狙いがありました。
実験の結果は、赤ちゃんサルは明白に、多くの時間を厚手の布で覆われた「母親」のもとで過ごしました。
愛着に「食料の供給」は影響しないことが示されたのです。
ぜひ身の回りの「愛着と食料」について考えてみると面白いかと思います!
チャート5 青年期の発達
青年期とは、児童期から成人期への移行期間にあたって12歳から10代後半ごろまでの期間とされており、自我同一性を形成する時期です。
この時期の発達が将来の対人関係、気分、能力にとって重要な役割を果たします。
5-1 生物学的発達
思春期は身体的に成熟し、子供から成熟した大人へと変容する時期で、およそ3〜4年間にわたります。
思春期における初期の脳の変化として扁桃体と腹側線条体が反応的になります。
扁桃体と腹側線条体では情緒、報酬、動機付けに関する反応がより活発に行われます。
(Erns et al.,2006;Guyer et al.,2008)
思春期における後期の脳の変化として前頭葉が発達します。
前頭葉は衝動や行動に認知的制御をする脳領域です。
(Larson & Richards,1994;Quevodo et al.,2009;Silk wt al.,2009)
思春期の脳の変化は主に後部から前部に移行します。
つまり、情緒、報酬に対する反応が強くなる一方、認知や衝動をコントロールするのが困難な時期であることが特徴です。
思春期に問題行動や事件、事故が急増するのは、こうした脳の成長過程があったからなのです
5-2 青年期の社会的関係
青年期における自我の形成は将来のキャリアパス、性格、人格の形成によって非常に重要な意味を持ちます。
精神分析家のエリック・エリクソンは自我の形成について以下のように主張しています。
青年期に直面する主要な課題は自我同一性(アイデンテティ)の感覚を発達させることであり、「私は誰か」「私はどこへ行くのか」といった疑問に対する答えを見つけることである。
第3章 心理発達
エリクソンは「私は誰か」「私はどこへ行くのか」の疑問という言葉を用いており、これを解決することが心理社会的発達を遂げる要素として重要であるとしています。
一般的には20代の早期あるいは中期までに解決することが望まれています。
一方、エリクソンは自我同一性の危機の解決が不成功に終わった状態を「自我同一性の混乱」と命名しています。
つまり、自分の一貫した意味や自己価値を評価する内的基準を持てなかった状態を意味します。
青年期という職業や政治、宗教における自我同一性が形成される期間に何を学ぶか?
これが非常に大切なことは言うまでもないでしょう。
最後に
今回は『ヒルガードの心理学』の第3編について紹介しました。
ここまでの話をまとめると以下の通りです。
- 人の能力は生まれつきなのか?この疑問に対して心理学者は生まれ(生物学的要因)と育ち(環境的要因)それぞれの立場を示しています。
- 新生児の能力を分析したいくつかの実験によると、私たちには「生まれる前」から学習し、記憶する能力が備わっている
- 児童期の発達段階の分析においてピアジェの発達段階理論によって4段階の発達段階が示されている。
- 人の人格を左右する気質。気質は生まれつき備わっている。
- 青年期の発達が将来の対人関係、気分、能力にとって重要な役割を果たす。20代後半までに自我の同一性の解決が望まれます。
今回は心理発達について紹介しました。
この記事を読んだあなたは人が発達する仕組みやその過程を知ることができたでしょう。
子育て中の教育方針の参考にすることはもちろん、
今の自分を形作っているのが過去の発達過程でどのような刺激に接してきたからなのか?
このような自己分析にも役に立てていただければ幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。
by ユメメ (╹◡╹)
このような方へ、
発達心理学の立場から人の発達過程を解説します!