こんにちは! ユメメです^^
今回は『ヒルガードの心理学』の第2編です。
「つい感情的になってしまう・・・」
「心理学と生物学、私の生活と何が関係しているの?🧐」
この記事では以下の4点について解説していきます。
- 心理学の生物学的基礎に関する研究
- ニューロン、神経系の構成単位
- 脳の構造
- 自律神経系と内分泌系
この記事を読むことで心理学の生物学的基礎を理解することができます。生物学的基礎を理解することで怒り、悩み、幸福といった人間の感情とうまく付き合うことができるようになります。
それでは、始めましょう!
目次
チャート1 心理学の生物学的基礎に関する研究
チャート1では心理学の生物学的基礎について紹介します。
フランスの哲学者であるルネ・デカルトは全ての人間の活動は外的な刺激に対する機械的な反応である。という考えを提唱しました。
例えば、
レモンを口に入れた時に顔をしかめるのは「酸味」という外的な刺激に対して生物学的な細胞(ニューロン)に電気信号が流れた結果、表情筋が収縮した。
と解釈します。
デカルトの主張は、決して「酸味を感じたから顔をしかめたのだ」とは解釈しません。
このように、心理学における「生物学的研究」とは、人間の活動を神経系の観点から考えることです。
つまり、愛、恐れ、怒りなどの感情の全ては生物学的機構によってもたらされると判断するのです。
これまでは人間の反応は主観的で感覚的な尺度でしか測られてきませんでした。
しかし、「外的な刺激」という観察可能な尺度を用いることで研究対象を個人に限定することなく、広く応用が可能になります。
心理学ではこのような「外的な刺激」を通じて人間の特定の反応を神経系という観点から様々な研究が行われています。
このような研究を理解するためには心理学の生物学的専門用語の理解は欠かせません。
そのため、以下では心理学における重要な専門用語として神経系の概要を紹介します。
1-1 神経系
神経系は全ての神経組織を指しています。
そして、神経は「中枢神経」と「末梢神経」に分けられます。
中枢神経は「脳」と「脊髄」に分けられます。
脳は中枢神経系の主要部です。脊髄の上端部に連なり、言語、思考、感情などの多くの情報処理を司ります。
脊髄は脊柱管内の長い円柱形の神経組織です。脳と末梢神経との知覚・運動の信号伝達の中継を司ります。
末梢神経は「体性神経系」と「自律神経系」に分けられます。
- 体性神経系は意識できる感覚機能や随意的な運動機能のための感覚受容器や、筋肉からの情報を相互に伝達する役割を担います。
- 自立神経系は心拍のような自動的で不随意的な機能を持つ内蔵器官や、内分泌腺の制御の役割を担います。
これを踏まえて、以下のチャートからは生物的な基礎についてより深く解説していきます。
チャート2 ニューロン、神経系の構成単位
物質の最小単位は原子です。街で使える日本円の最小単位は1円です。
では、神経の最小単位は何でしょうか?
答えはニューロンです。
2-1 ニューロン
ニューロンとは、神経インパルス(電気的な情報)を他のニューロンや内分泌腺や筋肉に伝えることに特化した細胞です。
ニューロンが存在するおかげで、火にかけたヤカンに触れて「熱い」と感じることができ、レモンに「酸っぱい」と感じることができます。
では、ニューロンにはどのような仕組みで情報が伝達しているのでしょうか?
ニューロンに情報が伝わるスタートは樹状突起から始まります。
ニューロンの先端は枝分かれしており、樹状突起と呼ばれ、隣接する細胞から神経インパルスを受け取ります。
そこから軸索を通り、シナプス末梢と呼ばれる小さな膨らみの終末ボタンに伝わります。
終末ボタンは、受け取り側のニューロンの樹状突起に隣接しています。
終末ボタンと樹状突起の接合部分はシナプスと呼ばれ、シナプスにはわずかな隙間があります。これをシナプス間隙と呼びます。
終末ボタンまで伝えられた神経インパルスは、神経伝達物質をシナプスの間隙に放出します。
そして次のニューロンへと伝えられるのです。
これが一つのニューロンに神経インパルスが伝わる過程です。
例えばヤカンを触った場合、「熱い」と感じます。
指先の熱受容体からの神経インパルスが一つのニューロンを刺激し、初めのニューロンから次のニューロンへと伝えます。
この連続によって神経インパルスは脳へと伝えられ、その結果、「熱い」と感じるのです。
脊椎のニューロンは約1メートルの軸索を持ち、脳内のニューロンは1センチの数千分の1の大きさです。
「熱い」という一つの感覚をとってみても、数々のニューロンが複雑に絡み合っているのです。
心理学者は人の感情を分析するにあたって、知覚の分析に手をつけました。すなわち「生物学的な要素」にメスを入れたのです。
2-2 神経伝達物質
現在の研究では、100種類以上の異なる神経伝達物質が確認されています。
この中でも私たちの生活に身近な神経伝達物質を以下に紹介します。
アセチルコリンは記憶と注意、筋肉のコントロールに関与しています。
アルツハイマー病によって減少することが知られいています。
ノルエピネフリンは人の覚醒に関与し、神経刺激薬で増加します。
うつ病で減少することが知られています。
ドーパミンは動機付けに関与しています。
自然な報酬(食欲や性欲)と乱用薬物の効果を調整しています。
セロトニンは気分のコントロールに関与しています。
セロトニン濃度を上げる薬として抗うつ剤があり、これにより不安の解消につながります。
グルタミン酸は脳における主要な興奮系の神経物質です。
学習と記憶に関与しています。
GABAは脳における主要な抑制系の神経伝達物質です。
不安を改善する薬物はGABAの活性を強めます。
このように、神経伝達物質には様々な種類があります。
初めて耳にする知らない薬でもそれぞれの役割と伝達の仕組みを知ることで、なぜこの薬に効果があるのか?を自分で調べることができます。
例えば、セロトニン再取り込み阻害薬として抗うつ剤があります。
抗うつ剤はなぜ不安の解消につながるのか?
それは、抗うつ剤により、ニューロンのセロトニン取り込みを阻害することができるからです。
セロトニンの取り込みを阻害することで脳内のセロトニン値を上げられます。これにより不安の解消に繋げることができるのです。
ニューロンと神経伝達物質の働きを理解すると、
痛み止めがなぜ効くのか?
といった薬が効く仕組みがわかりますね^^
チャート3 脳の構造
チャート3では、ニューロンによって運ばれた神経伝達物質のゴール地点である脳の構造を解説します。
カナダの研究者ポール・マクリーンは脳の三層構造を唱えました。
脳の三層構造とは、人の脳はそれぞれが進化の結果発達した、同心円を描く層状の三層構造からなるとした考え方のことです。
脳の構造を理解する一つの方法として、「脳の機能の観点」があります。
例えば、痛みを感じる脳の部分は「エリアA」
味覚を感じる脳の部分は「エリアB」のように、それぞれの機能に着目します。
では、脳の三層構造はそれぞれどのような「機能の役割」によって分類されているのでしょうか?
3-1 後脳
後脳は脊髄の頂点にあり、基本的な生命機能にとって必須の機能を担います。
そして、後脳は「延髄」、「橋」、「網様体」、「小脳」の4つに分類されます。
延髄は呼吸と直立姿勢を維持するためのいくつかの反射を抑制しています。
橋は延髄の上にあり、睡眠の調節や注意の制御に重要な役割を果たしています。
網様体は覚醒を制御しています。
また、感覚受容器は全て網様体に通じる神経線維を持っています。
つまり、網様体はある感覚情報は大脳皮質に届くようにも伝え、あるものは遮断する機能を持ちます。
小脳は延髄のやや上部にあり、運動の協調を司ります。
3-2 中脳
中脳は比較的小さく、橋の上部に位置しています。
中脳は「上下丘」、「黒質」とに分類されます。
上丘、下丘という二つの構造からなり、感覚を脳へ伝達する役割のほか、眼球運動を含む運動の制御を司ります。
黒質はドーパミンを送る経路であり、興奮を抑制する機能を有します。
体が動かしにくくなったり、震えたりするなどの運動障害が起きるパーキンソン病は黒質の破壊が原因とされています。
3-3 前脳
前脳は中脳と後脳を覆っている比較的大きな部分です。
前脳は「視床」、「視床下部」、「下垂体」、「辺緑系」、「大脳皮質」に分類され、多くの心理学的な機能にとって非常に重要な脳部位でもあります。
視床は睡眠と覚醒の制御の他に、感覚的中継基地として重要な役割を担っています。
例えば、視床に障害があった場合は、視覚や聴覚といった感覚受容器からの神経インパルスは大脳皮質に伝られず、これらの刺激を感受することができません。
視床下部の中枢は食物摂取、水分摂取、性行動を制御、ホメオスタシス維持に関与しています。
衝動の感じ方や、ストレスに対する感じ方にとって重要な役割を果たします。
下垂体は内分泌系とホルモンの産出を制御します。
辺緑系は本能的な行動を制御しています。
辺緑系しか持っていない動物は原初的な動物、例えば、魚や昆虫類が挙げられます。
大脳皮質は大脳半球の表層を覆う灰白色の部分で、運動や感覚、精神活動の中枢を担っています。
このように、「脳の機能」に着目することで人間の行動や精神の分析が可能になります。
外的な刺激によって脳のどの部分が活性化するか?その結果、どのように感情が動くのか?を分析できるのです。
3-4 脳をマッピングする
「脳の機能」によって分類された脳の三層構造について紹介してきましたが、現在ではより詳細に脳の機能を分析することができるようになりました。
近年の科学技術やコンピュータの発展により、脳をマッピングすることが可能になったのです。
脳のマッピングとは何か?
例えば、アルツハイマーと正常な脳における脳細胞の活動性を比較してみましょう。
上の画像が「正常な脳PET画像」、下の画像が「アルツハイマー型認知症の脳PET画像」です。
長野PET・画像診断センター より
青色から赤色に着色されている箇所が脳が活性化している部分、灰色は脳が活性化していない部分です。
アルツハイマーの場合は活性化している領域が正常な脳と比べて少ないことがわかります。
このように、脳を可視化することで人間の能力の低下を分析することができます。
脳のマッピングは病原の分析の他にも人間の行動をコントロールする上でも重要なツールです。
心理学者はこのようなツールを用いて様々な実験を行なっています。
例えば、
美味しそうなケーキを目の前にした時、脳のどの部分が活性化するのか?を分析したとしましょう。
そして、次は活性化された部分を平常時に戻すためにはどのような手法が効果的なのか?
を様々なケースによって比較します。
これはダイエットで「どのような行動が食欲を減衰させるのか?」を考える上で有用な研究と言えるでしょう。
心理学における脳科学的な研究は私たちの生活と密接に関わり合っているのです!
チャート4 自律神経系と内分泌系
チャート4では自律神経系と内分泌系の仕組みを解説します。
なぜ心理学の分野で自律神経系と内分泌系を取り上げるのでしょうか?
それは、
怒りや不安、幸福などの感情は自律神経系によって制御されるホルモンに影響を受けるからです。
そのホルモンの量を決めるのは何か?
それが自律神経と内分泌系だからです。
4-1 自律神経系
自律神経系⦅ANS⦆は脳と脊髄以外の神経系で内分泌系や心臓、胃や腸といった内臓平滑筋を制御します。
例えば、
食べ物が消化できるのは自律神経系があるからです。
意識して「食べ物を消化しよう」と考えなくてもいつの間にか消化は進みます。
このように、たとえ眠っていても、意識がなくても心臓や内臓は自立的に活動し続けます。
自立的な活動を支える機能を持つことから自立神経系と名付けられています。
人の無意識の活動を左右する自律神経系。
この自律神経系は「交感神経」と「副交感神経」の2つに分かれます。
交感神経は強い興奮状態で活動します。
一般に「緊急時」に活動し、「闘争か、逃走か」の状態に身体を整えます。
副交感神経は休息時に活動します。
交感神経によってに興奮状態になった身体を元の状態に戻し、資源を保存する役割を担います。
身体が正常である。というのは交感神経と副交感神経のバランスが釣り合った状態です!
4-2 内分泌系
神経系は筋肉などを活性化して体の活動をコントロールしています。
一方、内分泌系は神経系に比べて身体全体の細胞にゆっくりと作用します。
では、どのようにして内分泌系が私たちの身体に作用するのでしょうか?
そのヒントとなるのが、「ホルモン」です。
ホルモンは血液によって体の各部位に運ばれ、そこでそのホルモンを認識する細胞に特定の作用をもたらす化学物質です。
内分泌系から分泌されれるのが「ホルモン」で、ホルモンによって身体は怒りや喜び、ストレスといった作用を受けます。
例えば、
副腎は人の気分やストレスに対処する能力を決定する上で重要な役割を果たします。
副腎の内核からはアドレナリンとノルアドレナリンが分泌されます。
これが自立神経系の交感神経とともに筋肉や汗腺に作用し、心拍数を高めて、「闘争か、逃走か」の状態に身体を整えるのです。
よく耳にする「ホルモンのバランスが重要」というのは私たちの感情を大きく左右する要素だからです^^
最後に
今回は『ヒルガードの心理学』の第2編について紹介しました。
ここまでの話をまとめると以下の通りです。
- 人間の活動は外的な刺激に対する機械的な反応。
- ニューロンによって神経インパルス(電気的な情報=神経伝達物質)を他のニューロンや内分泌腺や筋肉に伝える。
- ニューロンによって運ばれた神経伝達物質のゴール地点である脳。心理学は「脳の機能」を理解、分析することで「人の行動や心」を観察する。
- 自律神経系と内分泌系によってホルモンが分泌される。怒りや不安、幸福などの感情はホルモンに影響される。
この記事を読んだあなたは、人の感情や活動がどのような経路をたどって形作られるかを理解できたでしょう。
「つい感情的になってしまう」
「気分が落ち込みがちだ」
このような方は、気分とホルモンとの関係から生活を見直してみてはいかがでしょうか?
本稿で学んだ知識を活用することで、あなたの暮らしが少しでも良くなることを願っています^^
最後までご覧いただきありがとうございました。
by ユメメ (╹◡╹)
このような方へ、
生物学的基礎を理解して生活を変えましょう!