『ヒルガードの心理学』を分かりやすく解説「Vol.5 知覚」【知っておきたい知覚の5つ】

こんにちは!ユメメです^^

今回は『ヒルガードの心理学』の第5編を紹介します。

ユメメ

知覚の特徴を理解して仕事を効率化しましょう!

この記事では以下の6点を解説します。

  1. 知覚の使用とは何か
  2. 注意
  3. 定位
  4. 再認
  5. 抽象化
  6. 知覚の恒常性

この記事を読むことで知覚の仕組みを理解することができます。

知覚の5つの機能を知ることで勉強や仕事の効率化知識を記憶に残すことができるようになります。

この記事がおすすめな人
  • 知覚の仕組みを知りたい人
  • 勉強や仕事を効率化したい人
  • 思い込みを減らしたい人

 チャート1 知覚の使用とは何か

例えば、

あなたが道を渡るとき、車が来ていないことを確認してから道を渡ります。

これは車が見えないという視覚情報を基に決定した行動です。

言い換えると視覚という感覚情報がその後の行動に影響した結果です。このような人の感覚(見る、聞く、触るなど)はどのように処理されるのでしょうか?

この章では入力された感覚情報の処理と使用を解説します。

1-1 入力された感覚情報の処理と使用

私たちは周辺環境から与えられる様々な感覚情報を頼りに生活しています。

これら感覚情報の処理は大きく2つに分けられます。

  1. 周辺環境の情報を獲得するための感覚器官
  2. 知覚表象に変換するための脳の中枢神経系

まずは1つ目の「周辺環境の情報を獲得するための感覚器官」についてです。

例えば、「視覚」という網膜上に映し出された「像」の処理過程についてアメリカ合衆国のJ.J.ギブソン生態学的光学理論を提案しました。

生態学的光学理論

ギブソンによると、光学的情報は、世界が私たちに提供する視覚に関する問題を全て解決するのに十分であるとしています。

言い換えると、視覚情報から得られる情報のみで、その他の情報や捕捉的な解釈は不要とした立場です。

一方で、人間は脳内で絶えず更新されるイメージ、つまり、「環境モデルを必要としている」とした立場があります。

これが、2つ目の「知覚表象に変換するための脳の中枢神経系」の解釈です。

この立場の解釈は、知覚は入ってくる感覚情報をその世界のモデルに統合するために仮説を打ち立てるというものです。

道路の横断の例については、「車が見えない」という状況から車が来ないという知覚情報は「道を渡るのは安全である」という解釈を生み出します。その結果、人は道を渡るのです。

要するに

入力された感覚情報の処理と使用は、各感覚様相は環境からの生の情報を獲得することに関係する感覚器官と、この情報を知覚表象に変換するための脳の中枢神経系の両方を備えているということです

ユメメ

知覚情報が正しくても、人が誤解をするのは知覚表象に変換するための脳の中枢神経系の影響があるからです

1-2 知覚の5つの機能

周辺環境から与えられる様々な感覚情報を知覚する場合、それを正しく認識したか(例えば、車が来ていないということ)を確認する場合、知覚の立場からはどのように説明できるでしょうか?

知覚機構を体系的に理解するためには、知覚の問題を5つに分類するのが有益です。

1)感覚が環境のどの部分に注意を向けるべきかを決定すること(注意

2)対象物がどこに位置しているかを決定すること(定位

3)対象物が何であるかを決定すること(再認

4)対象物から重大な情報を抽象化すること(抽象化

5)たとえ網膜像が変化しても、対象物の見え方を一定に保つこと(恒常性

例えば、「車が来ていないことを確認して道を渡る」場合を3例、挙げて考ましょう。

1)注意とは感覚を「車」に向けることです。すなわち、「車」以外のものに注意が向っている場合、「車」を正しく知覚しているとは言えません。

4)抽象化とは、窓の付いた箱型の物体ににタイヤが4輪ついていたならばそれを「車」と認識するということです。

この抽象化と良く似たものが、5)恒常性です。たとえ目の前の車がダンプトラックであっても、乗用車であっても「車」と認識できるように、恒常性が保たれている状態とは、対象物の固有の特徴を保持し続けているということです。

ユメメ

知覚の研究では以上のような5つの要素に着目します。

 チャート2 注意

人の知覚の5つの機能は注意定位再認抽象化恒常性に分類されます。

この5つの要素は人の知覚にとってどのような影響を及ぼすのでしょうか?

このチャートでは注意について詳述します。

2-1選択的注意

私たちが生活する中では周辺環境から多くの情報が与えられています。

例えば、電車でこの記事を読んでいる方は車内のアナウンスが聞こえたり、駅に止まるたび乗り降りする乗客を観察したりします。

言うなれば、私たち生活は多量の情報攻めにあっていると言えます。

このように多くの情報に囲まれていながら、私たちの脳がパンクせず、必要な情報を取捨選択できているのは、情報を受け取った際に選択的注意が働いているからです。

そして、私たちが周辺環境から情報を得ようとするときに多く頼られるのが視覚的注意聴覚的注意です。

視覚的注意

視覚的注意とは、興味ある対象物が網膜の最も敏感な領域である網膜窩に来るまで眼球を動かすことです。

次の写真は絵を見る時の眼球運動を記録したものです。

第5章 知覚 図5-2 絵を見るときの眼球運動 より 

人の顔を認識しようとした際、目、口、額のあたりに多くの注意が向けられているのがわかるでしょう。

聴覚的注意

聴覚的注意とは、多くの聴覚情報の中から特定の音だけを聞き分けることです。

例えば、人混みの中で誰かが電話を始めた場合、その会話だけがよりクリアに聞こえてきます。

コリン・チェリーにより、音を選択的に認識する能力が検証されています。カクテルパーティー効果です。

カクテルパーティーのような多くの人が雑談している中でも、自分に関係ある会話や自分の名前などはよく聞き取ることができます

このように人は、周囲からの情報から特定の音だけを選択的に聞き分けているのです。

ユメメ

何かに集中している状態は、選択的に注意したもの以外の情報が遮断されるということです。

これをうまく利用して、周囲の情報をできるだけ少なくし勉強や仕事に集中しましょう!

2-2 注意、知覚、そして記憶

勉強や仕事、プライベートでも、何かを記憶したい時には注意、知覚の仕組みをうまく使いましょう

注意と後の記憶の関係には一般的な規則があります。

私たちは注意の向いていない情報よりも、積極的に注意を向けた対象を記憶することが知られているのです。

視覚における注意と記憶

ロフタス(1972)は視覚における注意と記憶に関して報告しています。

彼は2枚の絵を被験者に見比べてもらい、一方に注意を向けるよう指示しました。

その結果、注意を向けた絵に関しては後になっても詳しく記憶していましたが、注意を向けなかった絵に関しては全く記憶していないという結果でした。

これと同様の結果が聴覚でも報告されています。

聴覚における注意と記憶

聴覚と記憶の相関を検証するためには追唱と呼ばれる手続きが使われます。

被験者はステレオのイヤホンをつけ、異なる文章をそれぞれの耳に流されます。そしてどちから一方の耳から聞こえてくる文章を追唱するよう求められます。

後になって、追唱した文章は内容を記憶していましたが、追唱しなかった音に関しては男性か女性か、声は高いか低いかといった物理的特性のみにとどまり、文章自体を記憶することはありませんでした。

この実験の意味するところは、注意の欠如は情報を完全に削除するわけではないということです。私たちが注意を向けなかった情報に対しては情報の強度を弱めようとするということです。

ユメメ

何かを記憶したい時。

意識的に注意を向けることの重要性が示されました。

 チャート3 定位

定位とは、対象物がどこに位置しているかなどを決定することです。

例えば、ドアノブを回し、ドアを引き開ける時、私たちはドアノブをドアノブとして正確に認識しなくてはなりません。

このチャートでは、「私たちが対象物をどのように定位しているか?」を紹介します。

このチャートを読むことで、物事を正しく認識(=定位)するコツを身につけることができるでしょう。

3-1 対象物の分離

私たちが対象を認識する際にまず行うのが対象物の分離です。

続いて対象物を群に体制化します。

私たちの網膜に移る像は変化する光の色の寄せ集めです。対象物の分離とは、網膜に投影された光の集合を一つのまとまりとして分離するということです。

分離された光の塊、つまりこれが群であり、群の体制化とは一つのまとまりとして分離された群を対象として認識するということです。

わかりやすい例を紹介しましょう。

次の絵は1915年にデンマークの心理学者であるエドガー・ルビンが考案したルビンの壺です。

第5章 知覚 図5-3 反転する図と地 より 

a)を見た時、壺が見えるでしょう。一方、白の範囲が広くなったc)を見たときは人の顔が見えるはずです。そして、顔と壺が同時には見えないことに気がつくでしょう。

この例でいう対象物の分離とは、刺激(色)の違いによってそれぞれを異なるものとして認識することです。つまり、黒と白を識別するということです。

群の体制化とは、異なるものとして認識された刺激を無意識のうちに同一のものとして認識することです。これは、黒を一体として捉えて顔と認識するか、白を一体として捉えて壺と認識するかということです。

ユメメ

これがゲシュタルト心理学の立場が示す対象物の認知です。

壺と顔が同時に現れないのは、群の体制化という機能が備わっているからです。

言い換えると、人の知覚はゲシュタルトの決定要因が強い影響を持つということです。

3-2 距離知覚と運動知覚

私たちが対象を定位しようとする場合、距離知覚運動知覚が頼られます。

  • 距離知覚

対象がどこにあるかを知るために距離知覚が重要な要素となります。なぜ人間をはじめ多くの動物が2つの目を持っているのか?

それは対象との奥行きを推論するためです。両目による対象物の知覚を両眼視差と言い、片目だけの場合を単眼視差と言います。

両眼視差の場合は、遠近を比較的に正確に推定することができます。

一方、単眼視差では対象の奥行きをうまく知覚できません。

しかし、単眼であっても人の知覚は過去の経験に基づいて対象の位置を推定しようと働きます。

これが6つの単眼手がかりです。

単眼手がかり
  1. 相対的な大きさ(大きいほど近いと判断する)
  2. 重なり(手前側が近いと判断する)
  3. 相対的な高さ(高い場合、近いと判断する)
  4. 遠近(平行線が遠方で消えると遠いと判断する)
  5. 陰影と影(光源の位置と物体の相対関係の情報を私たちに与える)
  6. 運動(早いほど近いと判断する)
  • 運動知覚

最後の単眼知覚である運動は私たちの定位において重要な情報を与えてくれます。

例えば、あなたが道を渡ろうとした際、車が一定のスピードでこちらに向かってくることを予想し、今のタイミングで渡れば安全であると判断するでしょう。

では、どのようにして私たちは対象物の運動を知覚しているのでしょうか。それは、実際運動ストロボスコープ運動によって説明されます。

実際運動

実際運動とは、対象物とその周辺の環境情報から対象物が移動していると判断することです。

例えば、走っている車を目で追った場合、車は視野の中心で静止していますが、周りの景色は流れているはずです。

このことから、車は移動していると判断します。

ストロボスコープ運動

ストロボスコープ運動は、1912年にウェルトハイマーの研究によって証明されました。

一瞬だけ点灯する光源を一定間隔、一定速度で移動させながら繰り返し発光させると、光源が移動しているように見える現象のことです。

第5章 知覚 図5-7 ストロボスコープ運動 より 

例えば、映画はスクリーンに連続して光源が照射されることで登場人物が動いていると知覚します。

ユメメ

ストロボスコープ運動のように、実際には動いていないものに対しても、私たちの知覚は「動いている」と判断してしまうのです。

 チャート4 再認

知覚には環境情報の中の「どこ」にあるかということだけではなく、それが「何」であるかを決定することが重要です。つまり、再認です。

例えば、天井に人の顔が見えたとしても実際には「壁紙に染み付いたシミ」だったという経験をした方もいるかと思います。

心理学における再認は対象物を正しく認識することを扱うものです。

このチャートでは人が対象物を「何」であるかをどのように認識しているかを解説します。

4-1 全体処理と部分処理

次の絵を見てみましょう。

あなたはこれを「パン」と判断するでしょうか?

あるいは「ポスト」と判断するでしょうか?

第5章 知覚 図5-9 全体処置と部分処理 より 

次の絵を見た時はどうでしょうか?

第5章 知覚 図5-9 全体処置と部分処理 より 

大抵の人は左の画像ではポスト右の画像ではパンと判断するはずです。

これは家の庭にパンが置いてあるはずがないと状況からあなた自身が判断した結果であり、キッチンにポストがあるのは不自然だと判断したからです。

このように、私たちの認知はまず全体処理を行い、続いて部分処理を行っています。

この過程の論理はトム・サノッキによって提唱されています。

彼は世界中の情報処理は早期の全体情報を使って、後の情報の解釈を行うという点に注目しています。

ユメメ

人は全体の印象や状況によって部分を判断します。

思い込み」が人の再認に大きな影響を与えることが分かるかと思います。

4-2 自然対象物の再認とトップダウン処理

私たちがどのように対象物を再認するのか?

  1. 自然対象物の特徴
  2. 文脈の重要性

から解説していきます。

自然対象物の特徴

例えば目の前に置かれた円筒の容器を正しく「マグカップ」と再認するためにはどのようなプロセスが働いているのでしょうか?

心理学ではジオン(特徴)回復という概念で説明されます

ジオンとは、対象物を構成する線や曲線といった要素のことです。

次の絵はどの程度のジオンによって対象物が再認可能かを調べた実験で使用されています。

第5章 知覚 図5-19 対象物再認とジオン回復 より 

左は対象物の完全な原型で、真ん中はジオンがまだ回復可能な範囲です。右はジオンが回復不可能なくらい対象物が変形しています。

この実験により、私たちが対象物を再認しようとする時、与えられた条件を使って過去の経験や知識を基に最も合理的な結論を創造することがわかっています。

文脈の重要性

先に言及した「パン」か「ポスト」かの通り、私たちが対象物を再認する時には周辺情報から対象物が「何か」を推測します。

このように再認には文脈が重要な意味を持ちます。

そして、私たちの再認は

  1. ボトムアップ処理
  2. トップダウン処理

によって決定されます。

ボトムアップ処理は単に入力によって駆動されますが、トップダウン処理の特徴は人の知識、経験、期待によって駆動されます。

パンとポストの例の場合、家の絵や、キッチンの絵の中に置かれた状況から、対象物を何か判断するのがトップダウン処理ということです。

ユメメ

人の再認は過去の経験や知識、文脈に大きく依存しているということです

 チャート5 抽象化

抽象化とは対象物から重大な情報を特定することです

例えば、人は持ち手のついた円筒形の対象物を見た時、それを「マグカップ」と判断します。

5-1 抽象化の必要性

抽象化とは、感覚器官によって与えられた情報を、記憶に予め貯蔵されている抽象的カテゴリーに変換することです。

持ち手のついた円筒形の物体は過去の経験から、「マグカップ」と判断します。

私たちがこれをマグカップと判断できるのは抽象化のおかげです。

曲線形の持ち手がついているもの、それはドアやバケツ、ヤカンなどが当てはまるでしょう。

そして円筒形の容器はグラス、花瓶、ペン立てなどが当てはまります。

この2つの要素が合わさった時、私たちの認知機能は大きさや形、質感などから過去の経験に照らし合わせて対象物を「マグカップ」と判断します。

抽象化とは、感覚器官によって与えられた情報(持ち手と円筒形の容器)を、記憶に予め貯蔵されている抽象的カテゴリー(マグカップ)と照らし合わせて不一致がない場合、それをマグカップであると判断するということです。

ユメメ

抽象化によって日常生活の中での判断回数を大きく減らすことができます。

これが人間が生きてきた中で身につけた生きるための能力なのです。

5-2 必要とされる貯蔵と情報速度

抽象化された情報は生の情報より容量を必要としないため早く作動します。

これはどういうことか?

次の絵は同じ悲しい顔の2つの表現です。

第5章 知覚 図5-22 抽象化の過程 より 

左は手書きで書かれており、右は楕円と線の身で構成されています。

これをパソコンに保存した場合、手書きで表現された方は30,720バイトのメモリを必要としましたが、後者の「抽象化された」表現では902バイトを必要としただけでした。

つまり、97%も節約できているのです。

抽象化したものを知覚し、記憶に符号化する方がより効率的なのです。

では、このような効率化が私たちの日常生活の中でどのように行われているか?

1989年、イントラーブとチャードソンによって報告されています。

第5章 知覚 図5-24 境界の拡張と抽象化 より 

この実験では参加者に写真が示され、後に写真を絵で再現することを求められました。Aを見た参加者はCを、Bを見た参加者はDを書きました。

結果、実際の写真よりも視野が広くなっていることが分かるかと思います。

人は見たものをその通り知覚し、貯蔵し、記憶しているというよりは、特徴的な要素を抽象化して記憶していることがわかったのです。

つまり、記憶に保存されるのは必要とされる重大な情報です。

ユメメ

効率的に記憶することのできる抽象化は私たちの知覚を助けてくれます。

その記憶は、重要な部分に限られますので、勉強などでで何かを記憶したい時には細部ではなく、大きな特徴に目を向けることが良いかもしれません^^

チャート6 知覚の恒常性

自分に近づいてくる車は段々と大きく見えます。

次第に車はあなたの目の前を横切ります。

はじめ、あなたが知覚した車は車体の前面です。次は車の側面。最後は車の後部ですが、このように網膜に移る映像が違っても同じ車であると知覚します。

なぜこのようなことが可能なのか?

私たちには恒常性の保持と呼ばれる能力があるからです。

6-1 恒常性の性質

知覚の最も重要な要素は恒常性を達成することです。

つまり、感覚器官によって与えられた情報はさまざまな環境要因によって変化しますが、そのような場合でも対象物の見え方を同じに保ちます。

知覚の恒常性には以下の要素があります。

  1. 色と明るさの恒常性
  2. 形の恒常性
  3. 大きさの恒常性
色と明るさの恒常性

例えばあなたに赤色の紙が手渡されたとしましょう。

それを白熱電球の下で確認した後、さまざまな波長の光の照明の中で、実際の紙の色が何色かを問われた場合、あなたは「赤」と回答するでしょう。

形の恒常性

開くドアが映す網膜像はさまざまに形を変えます。

しかし、いくら形が変わっても私たちはそれをドアと認識します。

第5章 知覚 図5-25 形の恒常性 より 
大きさの恒常性

対象物の網膜の実際の大きさが対象物の距離のために変化したとしても、対象物の実際の大きさを知覚します。

例えば、手前にネズミ奥に象が写った写真を見た場合、いくら写真の中のネズミが象よりも大きく写っていても実際の大きさは象のほうが大きいと判断するでしょう。

以上が「色と明るさ」「形」「大きさ」に関する恒常性の概念です。

ユメメ

恒常性が保たれているからこそ、私たちは環境情報を正しく知覚できているのです!

6-2 錯覚

私たちの感覚器官から与えられる刺激情報、つまり色や形、距離が変わっても恒常性によって身の回りの基本的特徴を知覚できます。

しかし、恒常性は、恒常性のまさにその性質によって、知覚が刺激の物理的性質とは実際的に異なるという意味において「錯覚」を引き起こしてしまいます。

アデルバート・エイムズはエイムズの部屋を作り出しました。

エイムズの部屋の覗き穴から内部を見ると次のように見えます。

第5章 知覚 図5-28 エイムズの部屋 より 

エイムズの部屋での大きさはは、少年と少女が左隅か右隅のどちらにいるかに依存しています。

実際には少年と少女は同程度の身長です。

しかし、観察者の目に少年が大きく映るのは、この部屋は部屋の線によって普通の部屋を見ていると信じ込み、2人が同じ距離にいると思い込んでいるからです。

実際には少女が立っている場所は少年から約2倍遠く離れているのです。

第5章 知覚 図5-29 エイムズの部屋の本当の形 より 
ユメメ

映画「ロード・オブ・リング」では、まさに錯覚を巧みに利用して撮影されています。

小人のホビットであるフロド役を演じているイライジャ・ウッドは人間役のヴィゴ・モーテンセンよりも約2メートルもカメラから離れた最後部にいたのです。

最後に

今回は『ヒルガードの心理学』の第5編について紹介しました。

ここまでの話をまとめると以下の通りです。

  1. 入力された感覚情報の処理と使用は、感覚器官からの情報と、この情報を知覚表象に変換するための脳の中枢神経系の両方を備えている。
  2. 注意とは、周辺から与えられる感覚情報の一部に集中すること。注意を向けなかった情報に対しては情報の強度を弱めようとする。
  3. 定位とは、対象物が「どこ」に位置しているかなどを決定すること。私たちは対象物を分離し、群に体制化することで定位している。
  4. 再認とは人が対象物を「何」であるかを決定すること。私たちの認知の多くはまず全体処理を行い、続いて部分処理を行っている。
  5. 抽象化とは対象物から重大な情報を特定すること。記憶に保存されるのは必要とされる重大な情報が多い。
  6. 感覚の恒常性とは、色や形、距離が変わっても恒常性によって身の回りの基本的特徴を知覚すること。時として、恒常性のまさにその性質によって、知覚が刺激の物理的性質とは実際的に異なる「錯覚」を引き起す。
ユメメ

今回は人の知覚について紹介しました。

この記事を読んだあなたは人の知覚に多くのバイアスがかかっていることを理解できたかと思います。

一方、このようなバイアス(推測)があるからこそ、物事を瞬時に理解することができるのです。

人の知覚は不確実なところも多くありますが、知覚の特徴を理解して、これらの特徴とうまく付き合っていきたいですね^^


最後までご覧いただきありがとうございました。

by  ユメメ (╹◡╹)




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